第一話 コッヘル
 
渓における装備品として主役的立場に上げられる一品の中でもダントツなのが食事を司るコッヘル。暇人協会渓流釣行のエピソードでもコッヘルを抜きには語れない。それと言うのも、コッヘルに憧れをもった切っ掛けは、暇人釣行白戸川源流での一コマまで溯る。当時、20年来の付き合いであった我がコッヘルのエバニュー社ファミリーセットを長い渡渉道中、あまりの重たさに厄介者扱いにしてきた私であった。しかし、体力勝負の源流釣行には欠かせない飯の種と半ば諦め半分、愛着半分で何時も使用していた。あるときは軽いチタン製のコッヘルにも浮気心が走りはしたが、格好の悪さから購入までにはいかなかった。
 
そして、白戸川源流釣行での夜食の時間帯に事は起こった。当時のチームリーダー兼、食事の番人でもある下田会長(当時の)の仕切りにより夜食を分担して作る作業が密やかに進行していく。渡渉の疲れから食事なんて何でも良いや?軽く作って早く寝たいな〜・・・なんて、軽薄な考えの軟弱者の私とは相反して、食事の番人曰く・・・「渓の最高の楽しみやだ盛大にカッコ良く作ろうぜ〜」の一言と同時に野菜や肉、現地調達のイワナなど家庭でもそこまで作らないだろうという豪華な料理を手早くこなす銘コックが渓畔に佇んでいた。彼のザックから取り出したコッヘルは、真っ黒に煤が覆う、見るからに使い古された釜型のコッヘルであった。そのコッヘルは、壇重ねで収納でき、中から3つものコッヘルと中心部にバーナーとガスボンベが収納されており、これぞコッヘルの王道とも言うべき代物! その魅力に一発で魅了された。
 
そう、これがメイド・イン・イングランド製ブルドッグマークの本家ホットン社ビリーポットとの出合。主な原産国は、イギリスの中でもオーストラリアなどの遊牧民が旅をしながら焚き火で調理がしやすいように取っ手がついて、焚き火に吊るせる使用になっているのが特徴。現在は、生産中止でオークション以外では手に入らないシロモノ。暇人協会の中でもほとんどの人が所有しているという優れものだが、残念ながら私の手元には、ホットン社のリメイク版である焚き火缶というビリーポットのコピー製品を所有。暇人協会の皆様、お金に困ったら私がビリー缶を1万円で買い取りますよ。できれば、4インチと5インチでお願いします。

記:市村

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